Vol.0002 「生活編」〜17回目の引越し〜 去年の9月末に現住所に引っ越してきました。引越しはこれで15回目、結婚してからは6回目、7歳の温にとっては3回目。4歳の善にとっては2回目です。友人からは「また引っ越したの?」と言われ、海外からの年賀状には「まだこの住所にいるかな・・・と思いつつ書いてます」などとしたためてあり、西蘭家の引越しの多さは友人間ではつとに知られています。これは私達(特に私の)引越し好きによるところもありますが、子供が生まれて手狭になって・・・という止むに止まれぬ事情でのヤドカリ生活の面が強いのです。 NZ行きも単純に言えば引越しです。香港からかの地へ居を移すことに変わりありません。これが駐在であれば辞令一つでことが進み、疑問も、躊躇も、たいした不便もない代わり、思い入れや大きな期待というものもないまま、事務的に事が進んでいくことでしょう。滞在期間が長期にわたったとしても、それはあくまで往復切符を持った移動なのです。 ところが西蘭家は任務を帯びて行く訳ではなく、100%自主的に、誰にも呼ばれも頼まれもしないのに行き、しかも帰ってくることを想定していない片道切符の移動です。そのため思い入れや期待が大きい反面、周到な準備も必要になってきます。まずNZ政府が私達を受け入れて滞在させてくれるかどうか、ひいてはその許可が下りるにふさわしい人物かどうかが試されることになります。企業がその人物と家族を保証するかたちで派遣するケースとは大きく違ってきます。 以前に読んだ本の中に、中国への返還まで続いた香港人の海外移民ブームを指して"下からその社会に入って行く"と評し、何の後ろ盾もないまま、ありつけた仕事とねぐらを基にその土地に根を下ろしていくので必然的に底辺からその社会に入っていくことになると説明していました。一方、日本人を含め駐在員と呼ばれる人たちは、その社会へ"中より上から入って行く"ことになります。特に発展途上国ではこの傾向が強く、高級住宅に住み、住み込みのメードや運転手付きの生活を送るというのは珍しい話ではないでしょう。 私のこれまでの15回の引越しのうち、日本国内での3回を除く海外での12回の引越しは、結婚した後に夫が香港駐在になった際に赴任した時の1回を除いて、すべてが言ってみれば"下から"の引越しでした。大学を出て台湾に留学して外国人留学生寮に飛び込み(4回目の引越)、その後に気のあった仲間4人とマンションを借り(5回目)、台湾を離れて留学したフランスのパリでは19世紀のアパルトマンに下宿し(6回目)、その後にやってきた"働くならココしかない"と決めていた香港では、友人宅で半年近く居候させてもらい(7回目)、就職してからは会社が借り上げていたマンションへ(8回目)。そこに私としてはかなり長い約2年間住んだ後、今度は心機一転、何のあてもないシンガポールへ(9回目)。振り出しに戻った"下から"の引越しで南国での一人暮らし開始。ここで夫、タカと知り合い意気投合、結婚して夫の会社が家賃を出してくれることになったのでより広いところへ(10回目)。その後シンガポールでマンションを購入し、初めて手にした借金だらけのマイホームへ(11回目)。でも内装工事が終わるか終わらないかで、夫に香港への転勤命令が・・・・。 ここで初めて引越代が出る、"上から"の引越しを経験。ところが家賃手当てが低過ぎて日本人駐在員が住んでいるような中〜高級住宅は超高嶺の花・・・。20軒以上見てやっと決めたマンションは日系の引越し屋さんに「そんなところにフツー日本人は住まないんですけどね〜」と渋い顔されるほど、"下から"チックなところでした(12回目)。その後大家が「売りたいから出て行ってくれ」と言い出し(むちゃくちゃな話ではありますが、香港では珍しいことではありません)、長男も生まれていたこともあり、シンガポールの家を売り払って今度は香港にマイホーム購入(13回目)。その後次男誕生で手狭になり、返還バブルで不動産が狂ったように値上がりしていたこともあって、どさくさに売却して再び賃貸住宅に(14回目)。そこも4年住んで(西蘭家最長記録!)さすがに狭くなり、再び越したのが今回の15回目でした。 ところが引越して数ヶ月で早くも、「次はココ!」という好物件をポクフーラムという香港島西南部の丘の中腹の静かな住宅地に見つけてしまい、「1年後はポクフーラム♪」を目指して、NZ行きの前のプチ引越しを夢見る毎日です。昔から"引越し貧乏"という言葉があるぐらいで、動かずにいれば金持ちにはなれなくとも、もう少しは節約ができたかな?とも思うものの、家族至上主義の西蘭家では多少のことは我慢しても家にはこだわるので、結果はこの通りの放浪生活です。次回が香港最後の16回目の引越しになるとすれば、17回目はいよいよNZへ。西蘭すごろくは再び振り出しに戻り、ファミリーの放浪はまだまだ続きます。 西蘭みこと ****************************************************************************************** このメルマガ「西蘭花通信」(西蘭花は中国語でブロッコリー)では、西蘭家がNZに旅立つその日までのドキュメントを、子どもの成長や香港の生活を織り交ぜながらお伝えしていきます。これは一つの夢をかたちにしていくための実験の記録であり、私にとっては確実に生きた時間の証となることでしょう。目にされた方が、「こんな人もいるのか〜」と思ってくだされば幸いです。そして皆様が改めて自分の夢に思いを巡らせて下されば、私にとってとても喜ばしいことです。 構成は毎回のテーマに合わせて、地域別の「NZ編」、「香港編」、家族や生活全般の「生活編」、今のところ私の本業で、香港の生活を語るには避けられず、それがなおかつNZの生活との面白い対比をなすであろう「経済編」「金融編」に分けてお届けする予定です。発行は目標では週刊としますが不定期発行になることでしょう。
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