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Vol.0010 「香港編」 〜雨の中の「香港セブンス」〜

3月下旬の7人制ラグビーの国際大会である「香港セブンス」(22〜24日の3日間)は大雨でした。季節の変わり目に当るこのシーズン、かなり肌寒かったり真夏日だったり毎年の気温はさまざまなのですが、これほどの土砂降りに見舞われての開催は、西蘭家が香港で暮らし始めてからの9年間では初めてでした。観客も濡れ鼠ですが、選手にしてみれば天然芝のグランドがプール状態となる中での厳しいプレーとなりました。怪我人も続出で滅多なことでは担架など出てこないラグビーには珍しく、かなりの試合で担架が出ました。雨天決行のスポーツとは言え、「これでもやるのかぁ〜」と心から感服するほどの悪天候でした。

今年のオールブラックスの仕上がりは、素人目にもあまり良くありませんでした。いつもの一枚岩のような厚みのある一体感が伝わって来ませんでした。準決勝となったフィジー戦。これまで王者の地位を二分してきたフィジーと準決勝で当ってしまうのは何だかもったいなく、夫も言っていたように「実質的な決勝戦?」と思われましたが、いざ試合が始まるとオールブラックスに的を絞ってきたらしいフィジーの方が明らかに一枚上手でした。結果は10対7で、フィジーはオールブラックスの猛追を振り切って決勝戦へ。

フィジーの選手は南太平洋のチームの中でも飛び抜けて背が高く、手足の長い選手揃いで毎回ワイルドな試合を見せてくれます。準決勝に勝ち上がったオーストラリア戦でも重量級の相手選手をマジックハンドのように良く伸びる手で捕まえてはバシバシ倒し、夫も「手首一つ分、他国の選手より長い」とうなっていました。小人数のセブンスはスピード勝負ですが、長足長手のフィジーはかなり後ろからでも敵に追いつき、肩やジャージ(ラグビーシャツのこと)をガッと捉まえては引き倒してしまいます。後ろからタックル食らうほうはたまんないでしょうね。

オールブラックスのキャプテンのエリック・ラッシュと同様、「セブンスの顔」であるフィジーのセルヴィは、小柄な身体と飄々とした顔つきでかなり異質な存在です。今年も孫悟空のようなひらりひらりとした身のかわしでたっぷり楽しませてくれました。彼はその小回りの良さを活かしタックルに行きもしなければ受けもせずに、巨漢の間をちょこまか走り回っては時々とてつもなく長いパスを出し観客の度肝を抜きます。しかも今大会では「香港セブンス」でのこれまでの総得点数が1000得点を超えるという、とてつもない金字塔を打ち立てました!

しかしこんなフィジーも決勝選となったイングランド戦では苦戦を強いられ、思いもかけない大敗を喫したのです。新生イングランドの眼中には最初からオールブラックスはなく、「徹底的にフィジーを研究してきた」というだけのことはあり、パワーと自信に頭脳プレーが加わった新しい試合運びを見せてくれました。今までのセブンスで見慣れてきた速さ主体の個人プレーとは異なる、一人のヒーローに率いられるのではなく、チームが一丸となって確実に相手を追い詰める緻密さは新鮮でした。攻めても攻めても崩れないばかりかジリジリ押してくるイングランドには、さすがのフィジーも苦しかったことでしょう。

しかしこれは単にフィジーの敗北というだけではなく、南半球に土がついた瞬間でもありました。北半球の優勝は81年の各国混成チームの優勝以来、実に21年ぶりのことだったのです!ラグビー発祥国イングランドの優勝は、なんと初めて!まさかの快挙に、香港の白人社会の大半を占める旧宗主国のイギリス人たちの喜びようは、すさまじいものでした。さすがフリーガンの国?逆に言えばニュージーランド、フィジー、サモア等の南太平洋は20年間もの間優勝カップを独占してきたことになります。香港で開いたセブンス・シーンの風穴がどうなるか、早くも先が楽しみです。

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「マヨネーズ」 私はラグビーを見るのは好きなんですが、これはたまたま夫がプレーヤーだったから興味を持ち始めたという程度で、「香港セブンス」以外には本格的な試合を観たことはありません。それどころかルールもうろ覚えで、「えっ??何で今、審判が笛吹いたの?」「どうしてあそこからキックなの?どうして?どうして?」と、観戦している夫に腰砕けの質問を浴びせては場を寒くさせています。(オットよ、すまん・・・)なのでエラそうなことを言えた義理ではないのですが、「香港セブンス」はたとえラグビーのルールを知らなくても、自分の国が出ていなくても心底楽しめます。これは絶対保証できます。次回では試合以外の楽しみ方など・・・。

西蘭みこと

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