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Vol.0028 「生活編」 〜パイの逆襲〜

「ねぇ、どうどう?」。ある日曜日の昼ご飯。そうめんをリクエストしていた夫を振り切って出したミートパイ。最近凝りまくっているパイ作り。梅雨入りして天気が悪いのをいいことに、朝からキッチンにこもって作りに作った、掌サイズのアップルパイ、ミートパイ20個!焼きたてのアツアツのパイがあるのに、そうめんなんて・・・。

「美味しい!」食べ物全般OKの、最近めっきり質より量になっている長男が真っ先に反応。「ま、いいけど。」と大のご飯党の次男。彼には炊き立てのご飯が一番のご馳走で、それ以外の食べ物には、きのこ類がやや好物という程度でたいした順番はないのです。リクエストを没にされた夫は黙々と食べてましたが、「美味しいじゃない。結婚12年目にして初めて家でパイが食べられるとはね〜。」と、ちょっと遠くを見る目でしみじみ。何もそこまで感慨に耽ってくれなくても・・・。確かに今までこういうものが食卓に上がったことはなかったけれど・・・。

4月に同じマンションのイギリス人家族が帰国前のガレージセールをやり、そのリストの中に「パイメーカー $50(約800円)」とありました。一応主婦なので料理はテキトーにするものの、私はデザート系が全く作れないため、移住準備の一環に3月から同僚に先生になってもらい、月イチのケーキ教室を始めたばかりの超初心者。ですからパイメーカーと言われても想像もつきませんが「$50って安くない?」と思い、すぐに訪ねていきました。

なんと息子の学校の先生だったという奥さんは、掌サイズの美味しそうなパイの写真がついた30cm×40cmくらいの箱を指して、「カンタンよ〜」と店員状態。「私でもできるかしら?」と言うと「モチロン!」と力強く言ってくれるではないですか! しかし、箱から出てきたのはビニールに入ったどう見ても新品。「実は私も買っただけで、その〜、忙しくて一度も作ったことがないの」。そ、そんなぁ。私にもできるって言ってくれたじゃないの・・・。「でもここにレシピもあるし、友達もこれで上手に作ってたから・・・」と、来週にも香港を離れる奥さんは一生懸命。たったの$50だし、何より美味しそうな写真に魅かれ、「何とかなるだろう」と買うことに。

その後、オーブンで焼く習いたてのアップルパイを復習がてら焼いた時のこと。中に詰めるりんごが余ってしまい、とうとうパイメーカーのお出ましに。要は電気ホットサンド・メーカーの穴の部分がパイ型になったもので、指定の大きさに切ったパイシートにフィリングを入れて焼けば、6分でこんがりきつね色のアツアツ、サクサクのパイが失敗なく(これが大事!)できるという、魔法のようなもの!これですっかり病みつきに。ポテトパイ、洋ナシパイ。そして、とうとうミートパイにもチャレンジ・・・。

パイをペロッと平らげた夫が不気味な微笑みを浮かべながら、「こうやってボクたちを洋食漬けにして移住に備えようって訳だね、キミの魂胆は大体わかってるよ・・・フフフフ」、と意味深な発言。奥サンの料理のレパートリーが広がってもウレシクないのか、そうめんが出なかったのがよほど悔しかったのか、発言の真意はナゾ。「そんなに和食が食べたいのなら・・・」と、私は再びキッチンへ・・・。

その日の夕食は野菜に鶏肉やきのこを加え、ちょっとリッチな味噌仕立ての純和風、具だくさんの「すいとん」。野菜の多さに腰が引けた息子たちも、口当たりのいいすいとんは気に入ったようで、パクパクパクパク。夫は夫で、「いいねぇ、たまには。すいとんなんて久し振りだ〜♪」と和食メニューにご満悦。

全員が食べ終わった時に、「ところでこのすいとん、何で作ったと思う?」。「お餅」、「お米」と息子たち、イイ線行ってるがもちろん外れ。夫は無言。どうもこの手の物が小麦粉だっていうのもご存知ないらしい。「そうめんが何でできてるか知ってるの?」と思いつつ、満を期して、「パイよ!」と留めの一撃。3人とも「?????」。

実は四角いパイシートを丸くくり抜いていくとどうしても角のところが無駄になってしまい、もう一度集めて麺棒で延ばしてみたりしましたが、どうも「コレッ!」という方法がなく、特に20個も焼けばその余った部分もかなりの量に。これを何とか活かせないかと思っていた矢先に、夫のナゾの発言。前にしゃぶしゃぶのお店で、「終わったあとの鍋にご飯を入れて作る雑炊の隠し味はチーズ」と教えてもらったことがあったので、和風でもごった煮系はちょっとした油分が風味になるのを知っていたので、油分を含んだパイ生地が立派な和食になることには勝算がありました。果たして、腰があり、歯ごたえもよく、煮崩れず、無駄も出ないという、「一石四鳥すいとん」の出来上がり・・・。これから西蘭家では「パイ+すいとん」が定番になりそうな気配。

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「マヨネーズ」  先月から香港のスーパーの店頭に並び始めたニュージーランド産のちびリンゴ。普段はNZ産フルーツはキウイしかお目にかかれないので、なんともウレシイ限り。このリンゴ、"安い、旨い、カワイイ"と三拍子揃ったスグレ物で、8個の袋入りで180円ぐらいですから断トツな安さ。現地で買ったら一体いくらなんでしょう?皮を剥いてお砂糖とレモンで煮て、シナモンやラムを振りかけてパイ生地に入れて焼けば、あっ〜という間に美味しいアップルパイに!しっかりした果肉のせいか、"煮ても焼いても食えるヤツ♪"なのです。最近はスーパーに行くたびに、ちょっとドギマギ。冬の国から来るちびリンゴたちがいつまで店頭に並んでくれるか、早くも心配になってきました。こちらは連日30度を越える真夏日です。

西蘭みこと

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