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Vol.0032 「NZ・生活編」 〜移住脱毛〜

「すべての道はニュージーランドに続く!」を完全に地で行っている昨今の私。とうとうこの度、100万円近くかけて永久脱毛に挑戦することにしました。女性にとってワキ毛の処理は永遠の課題。剃っても抜いても絶対生えてくるし、"まるで生えてないように"ツルツルであるのが理想であっても、どんな処理でもなかなかそうはならないのは、女性だったらよくご存知のはず。ノースリーブで電車のつり革にいつでも思いっきり捉まれる人ってそうはいないでしょう?

とは言ってもワキだけなら20万円もしないのですが、説明を聞いているうちにだんだんその気になってしまい、そうとうこんな金額に。その代わり襟足や額の生え際を自分の好きな形にするとか、顔の産毛だの、足だのといろいろ注文いっぱいの完全テーラーメイド型となりました。日本だったらいくらになるのか全く知りませんが、お店の人と意気投合したこともあり決めました。保証期間が2年なので移住前には完全に終わっているはずで、これも私にとっては立派な移住準備の一環です。

別にワキ毛があろうがなかろうが移住には差し支えないのでしょうが、決定に至るにはクライストチャーチで見た光景がなんとなく脳裏にありました。あれは香港に帰る前日の夕刻でした。最後のひと時をボタニック・ガーデン(植物園)で過ごした私たちは、車を停めていたカンタベリー博物館の方に向かって、既に人気がなくなった庭園内を歩いていました。その時、ふと木立の影に白いものがフワリと通り過ぎ、なんとなく「天使かな?」と思ったら、本当に妖精のドレスを着た小さな女の子でした。

その子一人でなく、他にもきれいにメイクした7、8才の女の子たちがドレスの裾を翻しながら気持ち良さそうに裸足で走り回っています。真っ赤な付け鼻をしたピエロが一輪車の練習をしていたりもします。「ショーがあるんだね」と話ながらなおも出入口の方に向かって歩いていくと、音響セットが見え始め、子供たちの引率をしている先生が木の下で台本片手に最後の稽古をつけているのに出くわしたり、楽器の音も聞こえてきました。

それが幾重にもなった夕暮れの濃い緑の中で、現れては消え、消えては現れして、なんとも幻想的。そして出入口正面の芝生の上には真っ白なテーブルクロスの裾が風にはためく円卓がいくつもできていて、リボン付のシャンペングラスが並んでいます。同じく真っ白な制服のボーイが忙しそうに行き来し、来賓はグラスを片手に一塊になって話に花を咲かせているところでした。月並みですが映画のワンショットのように美しい眺め・・・。

きっと子供たちの父兄や学校関係者なのでしょうが、盛夏の夜のひと時をこんな風に過ごせる贅沢と、こういうことを企画してしまうキウイたちのセンスに心から脱帽しました。集まった人の服装はスマートカジュアルがほとんどで、男性は蝶ネクタイからトラッドな半ズボンまでいろいろ、女性もワンピースからエレガントなパンツルックまで思い思いのスタイルながら、どこかに本人たちなりの正装を感じさせるものでした。

そんなシーンの片隅をエキストラのように通り過ぎようとした時、ふとライトアップされたその一角の中に、背中がV字型に開いた白っぽい細身のイブニングを着て、髪をゆるくアップに上げた人の姿を見たように思いました。実際にはそんな人はいませんでしたが、その後ろ姿は紛れもなく私自身だったのです。こんな風にイメージなのかこの目で見たのか判然としないようなシーンがパッと頭の中に広がることが時々あります。そしてそれが何年も後、自分でも忘れた頃に実現することもたまにあります。

私は白っぽいイブニングを持っていないし、襟足の形が嫌いなので髪をアップにしたこともありません。でも、いつか短い夏の終わりを、湿り気を帯びた夜気の中、グラスのリボンを夜風に泳がせて、弾けていくシャンパンに身を委ねながら過ごす時が来ないとも限りません。「今はエキストラでも、いつかはあのライトの当たっている人たちの中にいるのかもしれない・・・」。そう思うと何だか嬉しくなりました。本当にNZというところはいくつもいくつも白昼夢を見せてくれます。

イブニングだったらワキの処理は完璧でなくてはいけないし、髪もアップにしないと垢抜けないし、背中が波打っているなんて言語道断。それが一気に永久脱毛となるのは、一般的にはあまりにも飛躍した話であることは重々分かっているものの、私の中ではそれほど突拍子もない話ではなく、「移住のためにも脱毛しよう!」とあいなった訳です。そしていつか周りの緑を吸い込んだように少しグリーンを帯びた白っぽいイブニングも探さねば・・・・。

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「マヨネーズ」 「信じられない・・・」。脱毛の金額を聞いて夫は唖然。「ワキぐらいオレが剃ってやるよ。毎日ヒゲ剃ってるから上手いぜ。一生でもいいからさぁ。」と、早速説得攻勢に。私がなびかないと、「その金額だったらNZを何往復もできるよ。」と、私の急所と思ってるらしいところを突いてきたり、「そんなに気にしてたの?オレは全然気にならなかったけど・・・」と下手に出たり・・・。でも結局は彼が一番良く知っているように、すべては馬耳東風。私は昔から誰にも相談しない代わりに、一度決めたら自分の気が変らない限り、どんなに周りに説得されても平気のヘイさで実行してしまう質なのです。100人のうち99人が「辞めとけ」ということを断行してしまうことなど朝飯前で、台湾留学やマンション転がしなど、周りの反対や嘲笑をかったことの方が後々結果を生むこともままあり、逆張り人生まっしぐら。これで行くと周りで誰も憧れないNZ移住も上手く行きそうですよ。

西蘭みこと

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