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Vol.0076 「NZ編」 〜移住エージェント訪問記 その2〜

「100万NZドル(約6,000万円)用意できるか?」と、いきなり切り出してきた移住エージェントの質問に対し、心が動かなかったと言えばウソになります。その金額さえ用意できれば、永住権は確実なのです。「現金では無理でも、不動産も込みなら何とかなるかもしれない」と、私が思っていたその瞬間、夫も同じことを考えていたらしく、「日本の不動産でもいいってことですよね?」と質問しています。「もちろん。ただし住宅ローンが付いてちゃダメだ」と、いう答え。私達は海外居住者なので日本では住宅ローンが組めず、不動産にはローンがありません。

でもあれは夫の両親のために買ったマンションで、今でも義母が一人で暮らしています。何があっても手放すことはできませんし、その気も毛頭ありません。「だから100万NZドルが用意できない私達には投資移民の道はない」と、一般的に考えながらも、その一方で金融業界に身を置く端くれとして、「でも、あの家を抵当に融資を受けてそれをNZドルにして送金すれば?為替予約を組んでヘッジしておけば元本返済の時の為替リスクは発生しないし、現地で100万NZドルの銀行預金が年率6%で回るのであれば、日本での借入分の金利は十分返済できるから金利が反転しない限り返済リスクもなし・・・」と、ついついその先まで思考が進んでしまいます。

この方法で外銀から融資を受けられれば、私達にも資金が用意できますし、借り入れ金額から言って、100万NZドルの預金から発生する年間約300万円(税引き前)以上の預金金利で十分支払い金利は賄えるはずです。銀行にしてもオークランド支店で預かる預金と不動産と二重の担保が取れるので悪くない話でしょう。万が一私達が返済に行き詰っても、預かっている預金を差し押さえてしまえばいいし、私達も預金として預け入れている分を返済に充てて計画を白紙に戻すことができます。香港だったらまず間違いなくできる方法です。新生活を借金で始めることにはなりますが、期間は2年間。金利と為替が思いっきり逆転しない限りリスクも限定的です。私の計画を聞いた後、夫は早速行動に出ました。今度もその速さには舌を巻きました。

真っ先に問い合わせた取引銀行のシティバンクでは、「今年9月までは不動産担保ローンを扱っていたが、全てUFJに移管してしまった」とのことで、あっさり×。取引はないものの、ワールド・サービスでの連載でお隣さんでもある吉本日海さんお勧めのナショナル・オーストラリア銀行では、「英国、ニュージーランド、オーストラリアの不動産担保ローンは提供しているが、日本の不動産は対象にしていない」とここも×。しかも対応して下さった方に「外銀で不動産担保ローンを扱っているところはいくつかあるが、どれも日本の不動産を対象にしていない」と教わり、頼みの綱は香港最大の英資銀行
HSBCに。

しかし、「弊行は最低資産1億円以上の方へのプライベートバンキングに特化しており、リテールはしていない」と、あっさり門前払い。「1億円あったらこんな融資頼まないよな〜」、とこれも×。最初から期待していなかった邦銀は大手数行が口を揃えて「担保のあるなしにかかわらず、こういう使途が自由な融資はフリーローンと見なされ融資上限は300万円まで」と同じ回答。担保なし?フリーローン?つまり、サラ金の消費者金融と同じってこと?こんなので借りた日には目の玉がひん剥けるほどの金利がつくし、融資額もこれでは絶対的に足りず、やはりご縁はありませんでした。

西蘭家もつい最近までは最も一般的な一般技能部門での申請を考えていましたが、今年後半以降、申請に必要なパスマークというポイントが急激に上昇してきたため、現地での雇用が確保されていない限りこれでは申請ができなくなってしまったのです。そのため雇用主を探す一方で、他の方法がないものかとあらゆる方法を検討してみることにしたのですが、こうして投資移民の可能性があっさりと消えました。ただし、それほど期待していたわけでもなく、エージェントの話を聞いてその可能性を試してみただけなのでさほどガッカリというわけでもありません。リスクが低いとはいえ、新生活を借金しながらスタートするというのも気になるところではありました。振り出しです。

残るは一般技能部門か、企業家ビザ(実際にはそれを申請するための長期事業ビザ)の二つに絞られてきました。エージェントはこれらにはあまり興味がないようです。広告で"不成功無報酬"と成功報酬制を謳っている以上、手続きや書類作成が面倒そうなこうした申請には魅力がないのでしょう。それだったら中国で"ニュージーランド投資移住セミナー"でも開催して、潜在顧客を多数掘り起こした方がよほど効率がいいはずです。私達には"夢"であっても彼にとってはれっきとした"ビジネス"ですから、この体温の差は致し方ないことです。他を当たることにしましょう。(またまた、つづく)

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「マヨネーズ」  西蘭家での移住反対の最大勢力は長男・温です。香港生まれの香港育ち、ここを離れたくない気持ちもわかります。香港はこれまでの彼の人生のすべてなのです。「絶対行かないからね〜」と、一時は頑なに拒んでいましたが、私が計画を言い出してから足掛け2年。さすがにいつになるかはわからないにしても、移住は規定路線になってきました。人のいい善も内心思うところはあるのでしょうが、とりあえずは反対しないことで消極的な賛意を示してくれています(と、解釈しています)。

でも温の両想いのガールフレンドは小柄なブロンドのウェリントン出身のキウイ。密かに親の意向を汲んでくれてるのか?善はヒラリー・クリントンにあやかったらしい、同名のメチャメチャしっかりした香港人の女の子に片思い。移住の時にはどっちももめそう?

西蘭みこと