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Vol.0080 「生活編」 〜女の裏事情〜

"ドレスコード:Party Gear"。女友達のボーイフレンドからこっそり届いた招待状。お楽しみの幕が開きました。2ヶ月前から着々と進められてきた計画が大詰めを迎えたのです。彼女だけが知らない、彼女のためのシークレット・バースデー・パーティー。主役の驚き、慌てふためく顔見たさに、友人達は貝のように口を閉じ、済ました顔して彼女に接しながら、この日を心持ちにしていました。私も何度も彼女と食事をし、土曜日のパーティー前日の金曜午後までメールのやり取りをしながら、「じゃ、また来週」などと、白々しく書いていたものです。これもすべては当日のサプライズのため♪

計画は完璧!ワクワクしながら1時間後に迫ったパーティーに向けて久し振りに化粧をし、適当に髪に作り、着替えを始めました。10月のバリ爆破テロで知り合いを多数失くして以来、気分的に明るい色を着る気になれずにきたのですが、「今日はこれまでの冴えない気分を吹き飛ばすためにも"赤を着よう!"」と決めていました。幸い去年買ったミニドレスが真っ赤なサテンにたくさんビーズ刺繍が施されたものだったので、それを着て行くことにしました。

腕を通してジッパーを上げ、鏡を見ると「何かヘン?」。自分のドレスなのに何だか貸衣装のようです。「おかしいな何も変わってないのに?」と、さらにしげしげと鏡をのぞき込んでいると、どうもドレスが全体的に1.5〜2センチ下に下がった感じで、胸の開き方が違い、丈が長く見えるのです。ちなみに肩の部分を2センチばかり持ち上げてみると、ちょうど去年の感じになります。「ど、どういうこと・・?」と一人で真っ青。

どうもこうも、ないのです。痩せてしまったのです。今年の4月から3キロを目標に減量を始め2.5キロまでいったところで一頓挫。そのままだったので痩せたのはたった2.5キロのはずなのに、この変化!胸がどこかに行ってしまったんだろうか?でも下着のサイズは変わらないし、夫からの苦情もないし、今日のところは「背中の肉が落ちた」ということにしておこう。しかし、いくらなんでも開き過ぎのこの胸元をどうするか???

慌ててドレスを脱ぎ、裁縫箱を取り出して黒いリボンを胸元に縫い付けて広がり過ぎた襟を内側に引っ張って誤魔化しました。そんなことをしているうちに時間は刻々と迫り、子供たちにまで「ママ、まだいるのぉ?遅刻しちゃうよ〜」と言われる始末。整えた髪も乱れ、それをまた押さえつけ、招待状を握りしめてタクシーにダイビング、ジャ〜〜〜ンプ!会場に着いた時にはくだんの女友達が「私、ホント〜に知らなかったのよ〜」と、感涙にむせっているところでした。彼女が呆気にとられながら、会場に入ってくる決定的瞬間を見逃してしまったのです!嗚呼、残念。

・・・という顛末を別の女友達に話していると、「実は私もその日・・・」と、彼女の舞事情が・・・。「こっちは業界のパーティーでドレスコードは"セブンティーズ(70'S)"。もうみんなノリノリで、音楽だって"サタデーナイト・フィーバー"がガンガン!」。普段からノリのイイ業界なので、超コスプレで盛り上がったそう。「ところが、私も去年のドレスを着たら、なんか違う。よ〜く見て判ったのは"痩せた"ってこと。たいした違いじゃないのに、カラダの線がはっきり出るからかなり違って見えるんだよね。ドレスに合わせて買った下着まで合わなくなってた」、というから大変。

彼女はEだかFだか、私には想像もつかないくらい豊かなバストの持ち主。「まさか、私がバストで苦労するなんて」と、本人も認めているように、大き過ぎるくらいでも本来あったものがなくなれば、それはそれで一大事。「とにかく時間もなかったし、慌てて着替えて出かけたの。パーティーの途中で"なんかズレてない?"と心配になり、こっそりトイレに行ったら、なんとブラが完全にバストの下に・・・。慌てて引っ張り上げたわよ〜」と、聞いてるこっちまで思わず汗。こうして女たちには人に言えない数々の事情が・・・。

円卓5テーブル、計60人近くを集めた女友達のシークレット・バースデー・パーティーの方は、挨拶に立った二人がやんやの喝采を浴びる中、「実はプロポーズして、"YES"と言ってもらったんだ!」と彼が激白したところでクライマックスに!ステージの上で手を繋いで見詰め合う二人をデジカメに収めながら、「いいなぁ、シアワセそうだなぁ〜」とこっちもほのぼのとした気分に。テーブルに戻って撮ったばかりの写真をみんなで見ていると、「このテーブルでも写真を撮ろう!」ということになり、私も写真に収まりました。

帰ってから、「上手くいったなぁ。いいパーティーだった♪」と思いながらパソコンでデジカメの写真を見てみると、テーブルで撮った至近距離の自分の顔が真っ白!「やっば・・(汗)」。久し振りに化粧をしてファンデを塗って行ったのでそれがフラッシュに反射してハレーションを起こし、"うちわ"のような顔に。それに引き換え、何も知らずに口紅も塗らずスッピンで出かけてきたステージ上の女友達の写真は、どれも良く取れていて、ファンデも塗ってないので顔の色も自然で非常にイイ感じ。これを見てほろ酔い加減もすっかり覚め、冷静にパックなど始めて一人反省会。人に言えない女の裏事情はまだまだ続きます。

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「マヨネーズ」  パーティーの数日後に会った女友達は、「来年ケッコンするワ♪」と笑顔満面。いかにボロを出さないよう苦労して準備したかなど涙を流さんばかりに笑い合った後、彼女がふと、「でもね、彼ったらあのパーティーで信じられないくらいお金遣ってたの。請求書見て仰天よ。これじゃ結婚式は質素にするしかないわ」。ここにも冷静な裏事情が。でも彼女がくれた、会場でカメラマンがとってくれた写真は"うちわ顔"でなく"ホッ"。

西蘭みこと