>"
  


Vol.0089 「NZ編」 〜西蘭杯ダービー その4〜

「ねぇねぇ。投資ビザや企業家ビザでも英語試験のIELTSでのポイント取得が義務付けになったってことは、中国人のようにお金はたんまりあってもほとんどが英語ができないとしたら、申請できない人が増えるってことよね?」「ま、そういうことだろうね」。「・・って、ことはさ、そういう人たちを相手にしてきた移住エージェントは仕事がガタ減りなんじゃない?」「ま、そういうことだろうね」。「・・って、ことはエージェントに"もっとマケてよ!"って強く言ってもいいんじゃない?買い手市場ってことでしょう?」「ま、そういうことだろうね。でも、それって中国人の発想だよ〜」という、西蘭夫婦の日常会話。

夫は「それって中国人の発想だよ〜」と言ってはいるものの、非難めいたニュアンスは全くなく、「それって中国人の発想だよ〜。だから是非やったら?」という解釈になります。世渡りという意味で中国人の右に出る者はいません。アメリカ人やイギリス人で、とてつもなく世渡り上手がいたとしても、そうでないアメリカ人やイギリス人もごまんといるので、平均すると決して突出した存在には見えません。個人的にはユダヤ人ですら中国人の横ではかなり影が薄くなるのではないかと思っています。しかし、中国人は粒揃いで同じような発想をする一枚板の渡世人集団です。どういう時に攻め、どういう時は引くのが最も効率的かを感心するほど心得ています。

だから彼らがやるようにしていると間違いないことが多々あります。ただし、結果を追求し過ぎると「自分だけ良ければ」ということにもなりかねないので、私達はアクセルとブレーキを踏み分けながら自分たちの巡航速度を保ちつつ、日本人として中華社会に身を置いてきたつもりです。しかし、ことビジネスに関しては、「始めに競争ありき」をこの香港で徹底して叩き込まれたせいか、結構シビアに見るクセがついているようです。実際、自分達も常に顧客から天秤にかけられながら、なんとか口の端をしのいでいる状態です。

クリスマスと年末年始で中断してしまった"西蘭杯移住エージェントダービー"ですが、レースの経過は「ロシアンレッド」が早くも息切れ気味。「キウイトラスト」は出走経験の豊富さに物を言わせた卒ない走り。「ノーザンローズ」は質問攻めの割にはこちらの質問には一切答えないという徹底した独自のレース展開。「オージースター」は好印象ながら手数料が他社の2倍で痛し痒し・・・、と言ったところ。しかも、各社ともクリスマス前からピタッと連絡が途絶え、23日に「キウイトラスト」が最後のメールをくれた以降はナシのつぶてに・・・。

西蘭家としては、既に第三コーナーを回った「キウイトラスト」が最終コーナーにさしかかる前に、「オージースター」に価格交渉の余地があるのかどうかを確かめたく、ダメもとでメールを送ることにしました。内容は極めて率直なもので、「御社のサービス内容の充実や規模の大きさは認めるところながら、他社と比べたら料金が2倍であり、果たしてそれだけのプレミアムを払う必要があるのかどうか正直言って迷っている」、ということをありのままに書いてみました。

またお願いする以上、こちらも(1)独自にビジネスプランを持ち込むので、いわゆる"でっちあげプラン"が必要ない、(2)「それ以上を」と言われても困るものの、IELTS 6.5の英語力でのやり取りは保証する(つまり通訳を介したりする必要はない)、という彼らにとってのメリット(?)と思われることを、それこそ"でっちあげ"ました。どちらも根拠としてはかなり薄弱なのは百も承知で、彼らがこれにメリットを見出してくれるかどうか甚だ怪しいところではありましたが、こちらなりに精一杯の誠意を見せたつもりでした。

年が明け、今週に入ってから届いた返事には、(1)プランがあってもなくても申請に合わせて書類を作成する手間は変わらない、(2)特にアジア人向けの料金を設定しているわけではなく、料金と英語力は関係がない、と言う、至極ごもっともなお返事でした。それでも、「そちらの弊社に対するご好意も良く理解でき、非常にまれなことながら・・」という前置きで、1割引きにしてくれました!ニュージーランドで値切るということがかなり珍しいことは想像に難くなく、先方の意向は十分理解できました。

それでも「やった〜!」と、ガッツポーズになれなかったのは、図々しくも3割引きくらいを狙っていたので、1割という結果を判断しかねていたからでした。でも答えが出た以上、「オージースター」は完全に条件が整い、第三コーナーを回ったことになります。ちょっと前を「キウイトラスト」が快走しているだけで、第四コーナーはもう目前。実質二頭の一騎打ちとなり終盤へ。あとは直線コースを残すのみでゴールは目前!レースはいよいよ最終局面を迎えました。しかし、「ノーザンローズ」はいずこへ?レース放棄で帰ってしまったんでしょうか?(最終回へつづく)

***********************************************************************************

「マヨネーズ」  香港の冬は寒いです。気温そのものはたいしたことはなく、10度を切れば大騒ぎ、という可愛いものです。しかし、家というものがコンクリートの箱に窓をはめ込んだだけで床はフローリング、狭い割には全体に大作り、安普請というような作りなので、隙間風は吹き放題。しかも、ほとんど暖房らしい暖房もなく、家の中が寒いのです。

それなのに香港人は「気の流れ」を最も重んじる風水を人生哲学にしていますので、信じ難いことですが冬でもクーラーを回し続け、人工的に空気の流れを作るのです!だからオフィスもタクシーもバスも地下鉄も、どこもかしこもいまだに冷房中!それで「やっぱり冬って寒いわね〜」などと、知ったようなこと言う彼ら。通算14年住んでいてもやっぱり「?」。

西蘭みこと