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Vol.0105 「NZ編」 〜ようこそ、2月クラブへ〜

「タカさん、誕生日おめでとうございます。2月誕生日クラブの一員としてのおめでとうの挨拶です」というメールを受け取ったのは、まさに2月末の夫の誕生日当日でした。送ってくれたのは同じく2月生まれでニュージーランド移住を目指しているM氏。誕生日を覚えていてくれたのも感激なら、"2月誕生日クラブ"という命名も素敵で、本当に嬉しく思いました。以前に彼と「ニュージーランド移住関係者には2月生まれが多い」という話をメールでしていたことがありました。有名な移住者支援サイトの管理人S氏もそうだし、考えたら西蘭家は夫婦、長男の3人が2月生まれ。第一、NZの誕生日と言える建国記念日のワイタンギデーは2月6日!そのうちM氏の姪っ子さんがワイタンギデー当日に生まれたりして、「やっぱり2月!」と、局地的に盛り上がっていました。

3月に入ってからも私の頭の中からはそのことが抜けず、クラブの名前も勝手に「2月クラブ」に変わって、「個人の誕生日を祝うのではなく、NZ移住を果たしたことを祝い、そこで暮らしていることに感謝する新しい生活の記念日にしよう。集まるのは祝日になるワイタンギデーにして、NZ市民として建国も一緒に祝おう。毎年場所を変えて参加者が集まり、移住を夢見た日々や実際に移り住んできた当初のことを語り合うのはどうだろう?みんな一人一人にドラマがあるはずで、それをみんなで聞くのは素晴らしいことなんじゃないだろうか・・・」と、夢は膨らむばかり。

恋焦がれて移住を果たした当初は舞い上がらんばかりの日々でしょうが、いくら憧れの国とはいえ、実際に生活が始まれば観光客の時のようなお気楽な毎日という訳にもいかないであろうことは、"NZ極右"の私にでさえわかります。最初は"あばたもえくぼ"であっても、所詮あばたはあばた。それを分かった上で、尽きることのない泉のような愛情を注ぎ続け、感謝の想いに首まで浸りながら暮らすことができるのかどうか。先立つ想いが強ければ強いほど、その通りにならなかった時の失望だって大きいかもしれません。

時には人によっては、「こんなはずじゃなかった」という期待はずれから、「NZはロクなところじゃない」と問題をすり替え、上手くいかない理由を自分ではなく、他に求めてしまうかもしれません。でも本当は、NZはその人が来る前も来た後も同じようにそこにあり、本人が見方を180度変えただけなのです。そうした堂々巡りを経ながらも、1年に1回でも自分が移住を思い立った頃の情熱と、その頃思い描いていた夢を鮮明に思い起こす日があったら、傾き始めた想いへの杖になるかもしれません。「2月クラブ」がそのきっかけになれたら・・・。

「初めて来た時に感じたニュージーランドの開放的な空気、人々の温かさ、すばらしい自然。何をとっても海外での生活初体験の私にとって刺激的で、そして心地よさを感じました。日本でのぎちぎちした生活とはまったく正反対で、今までの日本での生活は自分自身に対して無理してたんだってことを改めて感じました(中略)。ニュージーランドでの生活を垣間見て、私はどんどんニュージーランドに魅せられていったわけです。」

そんなことを想っていた矢先、かなり年下らしいけれど移住では先輩に当たる読者の方から初メールをいただきました。ご本人は学生、ボランティア、ワーキングホリデーと、いろいろなかたちでNZにかかわった末、「この暮らしてきたこの土地で何か自分のために残したい。それが私にとって永住権取得でした」と、永住権取得を決心され、たくさんの方の助けを得て1年後に無事取得。今ではオークランドで日本にいた時とは全く違うお仕事でがんばっておられるようです。短い文面からでも試行錯誤しながら生活の手応えを頼りに少しずつ前へ進んで来られた様子が目に浮かぶようでした。

「西蘭さんのメールを拝見させていただいて、私がすこしづつ忘れかけていた最初の時の気持ち、ニュージーランドのすばらしさを改めて思い出させていただいています。そして時として、心が痛み(いやな意味じゃなく)、時としてハッピィな気持ちになります。西蘭さん。ニュージーランドへの永住への道のりももうすぐですね。私ももう少し、この土地でがんばってみようって思ってます。ニュージーランドでお待ちしてます。」

最後まで読み進め胸が熱くなりました。自分は確実にこうした先輩たちの後を追っているのです。そうである以上、いつか"最初の時の気持ち"を思い出さなくてはいけないような岐路に立つ日が来ないとも限りません。「これで良かったんだろうか?」「家族は幸せなんだろうか?」という迷いや不安は、すべての先輩たちが過ぎた道なのでしょう。でも、流されていきそうな時こそ杖を流れに差し、自分を見つめ体勢を立て直し、「だいじょうぶ。きっと間違ってない。来て良かったんだ」と再び明日に向かっていきましょう。ようこそ、「2月クラブ」へ。同志の方を募集します。

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「マヨネーズ」 「先日お送りしたメールは私自身に送ったメールでもあります。これは私自身に対する激励メールだったわけです。"もう少しニュージーランドでがんばります"っていうのは今の私の本音です。ニュージーランドはもう秋です。月曜日から降り続いた雨が止み、今日は快晴でした。こんな日、私はちょっとした幸せを感じます。真っ青な空を見て、自然に触れ、空気を吸って、そして私はがんばろうって思えるのです」 

2通目のメールにはこうしたためてありました。雨が降って、止んで、それを幸せに思えるなんて、なんて贅沢な暮らし!私も自然に寄り添って毎日を丁寧に暮らしていきたいと思います。こちらもがんばりますね。オークランドでお会いしましょう!

西蘭みこと