Vol.0124 「生活編」 〜夢へのドライブ 最終回〜 「移住先のニュージーランドで運転しよう!そして、自分の好きな家の写真をとことん撮りまくろう!」 自動車免許をとる理由としてはかなり限定的な理由ではありますが、私は新型肺炎(SARS)回避でやってきた日本で、免許をとる決心をしました。子供も初めての日本の学校で頑張っているのですから、親としてそれを励まし支えるだけでなく、自らもまったく新しい環境の中で学び、試験で試されるという経験をしつつ、「戸惑いや喜びを彼らと共有していくのもいいかな?」と思いました。 周辺の地理に詳しい夫のアドバイスで、送迎バス利用で家から20分もかからない最寄の教習所に入学しました。ここは専属担当制という独自のシステムを導入しています。入学時に担当指導員が決まると、卒業までその人とみっちり学ぶというもので、基本的に他の教官に習うことはありません。これは教官同士の教え方の違いからくる混乱を防ぎ、教官が教習生の進度に責任を持つことで少しでも合格率を高め、脱落者を減らすことを目的としたもので、実際に効果を上げているそうです。 私はそのシステムに特に魅力を感じていたわけではありませんが、「担当教官と性格が合わなかったら狭い車内でちょっと辛いかもな〜」という懸念は、ラグビーと動物好きな人に担当してもらうことになり、すぐに吹き飛びました。私の教官は野鳥のために、教習所内にパンを撒くほどの生き物好きで、近所の幼稚園で飼っている15匹のうさぎに餌をあげてからやってくる私といいとこ勝負です。「動物はいいよな。嘘つかねーからなぁ。あ、その先、右ね。」と言う感じで、毎回の教習が進みます。 教習所通いは私にとって、未知なる世界に足を踏み入れたようなものでした。周りは前後左右どちらを向いても自分の娘や息子であってもおかしくない、20歳前後の若い人ばかりで、テストの解答用紙の記入例でも「生年月日」の欄が「昭和56年」となっていました。入学式には約1時間もかけて、入学の心得をとくとくと諭されましたが、その内容にはかなりビックリしました。 @指導員・送迎バスの運転手への挨拶励行、A教室での飲食禁止、B授業中の帽子・サンダル禁止(靴のかかとを踏むのも禁止)、C授業中の携帯使用・メールの禁止、D授業中の居眠り厳禁(したら退場)、E授業中の私語禁止(ひどければ退場)、F授業が終ったら忘れ物がないかを確認して椅子を入れて帰る、G授業は必ず前の席から詰めて座る(居眠りや携帯使用の防止策)、H未成年の禁煙・・・などなどの注意事項が、なぜしてはいけないのかという理由つきで、延々と説明されました。直接注意しても改まらない場合は、退場 → 始末書 → 担当指導員への連絡 → (最悪では)退校処分、となるそうです。 実際の説明は「挨拶励行」などという簡潔なものではなく、「挨拶なしでいきなり教習を始めるのは気まずいでしょう?指導員だって人間ですから、そういうのが続くとキレるんですよ。だから"おはようございます"でも"こんにちは"でも、朝か昼かわかんない時は"お願いします"でもいいから、とにかく挨拶するように」など、項目ごとにきめ細かい説明がありました。マニュアル化してでも挨拶させ、規則を守らせようと一生懸命です。それでも帽子を被って教習を受けようとする人、机の下でメルしちゃう人がいるんだそうです。"躾"以外にもビックリだったのが、教科書。漢字という漢字すべてにふり仮名がふってあるのです。"車"は"くるま"、"赤信号"は"あかしんごう"となります。 教習生の待合室。ケータイしていた教習生の脇に彼らの父親のような年齢の教官がしゃがみこみ、「アルバイト忙しいのか?でも、このままだと期間内に卒業できないぜ。そうなると払ったカネ、全部ムダになるのわかってんだろ?そのう、もうちょっと、しょっちゅう来れないかなぁ?」と、遠まわしに諭している姿を何度か見かけました。教習生はケータイを手にしたまま、「はあ」とか「ええ」とうなずくばかりで、今ひとつ「YES」か「NO」かはっきりしません。 教習所は学校ですが、少子化の中、千葉県下だけで60校がひしめく非常に競争の厳しいビジネスでもあります。そのため、最大公約数の若い教習生を対象にしたカリキュラムを組み生き残りを図っているうちに、私の教習所では"担任"や"躾"といった密着型の至れり尽くせり指導に行き着いたようです。一方で、頭の先からつま先まで「全身これ、浜崎あゆみ!」という目力入りまくりの19歳や、どこから見てもヤンキーの男の子がとっても礼儀正しかったり、私は期せずして現在の日本の若い人の一面を知るところとなりました。学びに年齢も職業もありません。彼らと机を並べ、試験結果を心配した日々は必ずやこれから始まるドライバー人生の出発点として、一生の思い出になることでしょう。来週はいよいよ本免試験のスタートです! *********************************************************************************** 「マヨネーズ」 都合4回連続となった"免許狂想曲"にお付き合いくださり、ありがとうございました。タイトルを見て、「また免許?移住はどうなったの?」という読者の方の声が聞こえてきそうでビクビクしながら、ここまで引っ張ってしまいました。それくらい私にとっての免許取得は大きな大きな方針転換で、人生の視野が一気に広がる出来事でした。 教習所によると、道路交通法が定める"若い人"とは16〜24歳で、交通事故全体の3分の1が彼らによって引き起こされているそうです。理由は@スピードの出し過ぎ、A追い越しが約半数で、これに経験不足、多数の同乗者などの悪要因が重なるそうです。親として子に死なれるほど辛いことはないでしょう。若い方、お互い安全運転で行きましょう! 西蘭みこと
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