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Vol.0149 「NZ編」 〜「ハイ!ヘレン」〜

8月にニュージーランドで開催されていた、オーストラリア、ニュージーランド、太平洋島しょ国など16ヶ国・地域の首脳を集めての太平洋諸島フォーラム(PIF)で、ちょっとした"事件"がありました。オークランドのホテルで、首脳陣の警護に当たっていた警察官220人のうちの一人であった若手女性警官が、目の前を取り巻きと一緒に通り過ぎて行くクラーク首相に向かって、「ハイ!ヘレン」と声をかけたのです。このことを伝えた「ニュージーランド・ヘラルド」(インターネット版)の見出しは"Officer in hot water for using 'H' word"と意味深で、"Helen"の代わりに"'H' word"とし、そのタブー度を如実に示しています。

警察側は、「総理は通り過ぎる際にこの巡査のいた方向に微笑まれ、非常に親しみやすく、それ自体何の問題もなかったのだが、かの巡査は不適切な対応に出てしまった」と状況を説明しました。そして、"She is the Prime Minister of New Zealand, after all"と表明し、各国首脳を集めての桧舞台での"失態"に頭を痛めています。くだんの女性警官は規定により処分されたようです。一方、首相側のスポークスウーマンは、「これが一般市民からであれば何ら問題はなく、一般的に総理を知らない人は"Prime Minister"と呼び、市民はしばしば"'Helen"と呼んでいるが、総理がこれを不服とする姿勢を見せたことはない」と助け舟を出し、"事件"は穏便に処理されたようです。

記事を目で追いながら、「なんてかわいい"事件"なんだろう」と、一人でクスッと笑ってしまいました。たわいもない事件そのものも、それに生真面目に対応する(少なくも表面上はそう見えます)周囲も、なんだか本当に律儀でユーモラスです。女性警官がVIP護衛という公務の最中に、深く考えもせず首相にファーストネームで呼びかけたのは、本当にそしてみたかったからなんでしょう。もしくは首相の引き込まれるようなスマイルが、思いもかけない行為を誘発してしまったのかもしれません。小泉首相も支持率が高かった頃は、マスコミから盛んに"純ちゃん"呼ばわりされていましたが、日本での首相ポストの敷居の低さがその面白みの大半を奪っていたように思います。

この記事を読んで、今から1年半前のニュージーランドの新聞記事を思い出しました。ちょうどNZ旅行をしていた時に読んだもので、あまりの可笑しさにいまだに持っています(こういうものを溜め込んでいるから、いつまでたっても家が片付かないんでしょうね)。それは私たちの旅行の直後に予定されていた、エリザベス女王のNZ訪問に関するものでした。記事の中でイギリス王室の担当官による「女王との接し方」の説明は、傑作です。まず女王に会ったら、「Don't panic」。その理由が「She is human」と言うのには、椅子からずり落ちそうになりました。「マジ〜?」と思わずその部分を読み返してしまったくらいです。

挨拶は腰をかがめての本格的なものでなくお辞儀で十分だそうで、それさえも義務ではないとのこと。「何もしなくても首をはねられることはありません」というコメントがなんともイギリスちっく!しかし、女王に触れることだけは絶対のタブーだそうで、かつてオーストラリアのキーティング前首相がこの掟を破ってしまった際には、イギリスのタブロイド紙に"Get your 'ands off ower Queen, Aussie git(=まぬけ、ばか、あほ、役立たず、無能な人 「英辞郎」より)"とこき下ろされました。彼が立憲君主制を否定する立場の労働党だったことも痛烈な批判の背景のようです。

私はこの二つの件に共通するものとして、"権威に対する敬意"を見ました。これが行き過ぎると無分別で盲目的なものにもなりかねませんが、国を代表する立場の人を敬えることはそれに他意がなく自覚的ある限り、国民としての誇りではないでしょうか? 自分たちが正当な方法で選んだ元首であるなら、なおさら尊いことです。手の届かないところでコロコロ変わる短命の首相に対し、国民が自然に敬意を払うことなどあり得ないでしょう。そのため、"'H' word"うんぬんや「女王とて人間」いう真面目な論議は、微笑ましくも好ましいものに思え、同時に少し羨ましくもありました。(エリザベス女王の場合、国民に選ばれた存在ではありませんが、王室というブランドにはまだまだ人を魅了するものがあるようです) (どういうわけか、つづく)

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「マヨネーズ」 インターネットで調べものをしている夫が、「う〜ん、やっぱりコレがいいかな〜?」と独りごち、「知りたい?」とふってきました。「別に・・・」と、あせあせアイロンをかけていると、「移住したらどの航空会社のアライアンスに入ろうかと思ってさ〜」と、自動解説が始まりました。「・・・・・・・(汗)」

さすが、「趣味:出張」と言ってはばからないヒト。目のつけどころが違います。今までは"キャセイ航空命"で、空港ラウンジが自由に使える「マルコポーロ・クラブ」のメンバーを死守してきましたが、移住後はキャセイが所属するアライアンス「ワンワールド」は使い勝手がワルくなり、いろいろな面からニュージーランド航空の「スター・アライアンス」に乗り換えた方が得、というのが結論のよう。「これだったら日本がらみはANA、アジア出張だったらシンガポール航空が使えるし・・」と、夢は続くよどこまでも。おまけに、加入する予定の有料空港ラウンジ候補まで見つけ出し、「これで出張は万全!」とご満悦。呆気に取られていると、「呆れてる?メルマガに書いてもいいよ」という開き直りぶり!!

移住が決まったわけですらないのに、何をも恐れぬこの前向きさ!西蘭家の原点なんでしょうね。かく言う私も、「これはストックがいっぱいあるから移住までもつな〜。余ったら○○さんに残していこう♪」と、家中の荷物整理の真っ最中。二人とも長生きしそうです。

西蘭みこと