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Vol.0224 「香港・生活編」 〜七夕の夜に〜

今日は七夕でした。「もう子供も大きいし、どうしよう・・・」と思いながら、仕事に行く夫に「今日さ七夕でしょう?何かする?」と軽くふってみたら、「七夕ね〜。願いもかなっちゃったしな〜」という素っ気ない返事。笹はいつもクルマで笹取りスポットに乗り付けては一本失敬して帰るのが常でしたが、今年はそのクルマも、ニュージーランドに向かってどこかの洋上を漂っているはず。

「本当にどうしよう」と思っていると、急に雲行きが怪しくなり、いきなり横殴りの雨が降ってきました。窓ガラスに叩きつけてくる雨の向こうに真昼間でもはっきり見える、銀のナイフのような稲妻が視界を引き裂いては消えていきます。「これじゃあ、織姫と彦星が会えないじゃない!」と恨めしく空を見上げていたら、突然雲がパカッと割れ雨が止んだのには、我ながら吹き出しそうになりました。派手に騒いでいた雷坊主たちが、「しまった!今日は七夕だったんだ」と気付いたかのように、あっという間に雨雲が左右に引き上げて行きました。それを見たとたん、「よし!ちゃんとお祝いしよう」という気になりました。

西蘭家ではほぼ毎年七夕を祝ってきました。子供が小さい時は一大イベントで近所のお友達も呼んでみんなでワイワイやりました。大きくなってからはさすがに家族だけになりましたが、笹の準備は万全で、あとは色画用紙を切ったり、色紙で飾りを作ったりと、手軽に楽しめるささやかなイベントでした。9年いてくれたフィリピン人のお手伝いさんも楽しみにしていてくれ、短冊を横にしてはタガログ語で熱心に願いごとを書き入れていました。

願いは多々あるものの、ここ数年の本命といえば、「早くニュージーランドに行けますように!」 それが今年はもうかなっているのですから、このお礼をしないわけにはいきません。近所のどこに笹があるのかまったく見当もつかないまま、「今夜は手巻きにしましょう。会社の帰りに適当にネタを買ってきて」と夫に電話を入れ、たっぷりと米を研ぎました。笹はあっという間に萎れて葉が丸くなってしまうので、夕方になって初めて探しに行きました。心当たりは全然なかったのですが、とにかく近所の緑のある方へ行ってみました。

200メートルも行くと公園とも呼べないようなネコの額ほどの、ベンチがあるばかりの休憩所があり、そこに青々とした笹がしなだれかかっているではないですか!この道は今まで数え切れないほど歩いていますが、今日の今日までここに笹があることなど知りませんでした。そのうちの枝振りのいい一本がまるで切ってくれといわんばかりにこちらに向かって延びていたので、花壇に入らずともなんなく切ることができました。「なんて上手くできてるんだろう。」 感謝してその一本をいただいてきました。あまりにもすぐに戻って来たのでびっくりした善が、「ママ、それ買ってきたの?」と思わず聞いたほどでした。

夕食後、さっそくみんなで準備にかかりました。ニュージーランドに向けて荷物を送り出してしまった今、色紙や画用紙など手元にあるはずはなく、短冊は裏紙、飾りはレンジマットを適当に切り、星はアルミホイルで作りました。紐がないのでビニールバッグの持ち手の編んであるナイロンをほぐしていると、「キミはどこでも生きていけるよ」と呆れ顔の夫に言われました。いざ短冊にお願いを書く段になったら、急にみんな張り切りだし、「ラグビーがうまくなりますように」、「サッカ(サッカーのつもり)がうまくなりたい」(善)、「ロックマンで全クリ(クリア)できますように」、「世界平和」(温)と、サラサラサラサラ。もちろんみんなで「ピッピとチャッチャがいつまでも元気でいますように」とも。(←なんだかお願いばっかりの欲張り七夕?)

私はまずはNZ行きのお礼、それから今まで書いたこともない「商売繁盛」。まったく現実味がなく、手書きだと繁盛の「繁」が思い出せず、思わず夫に聞いてしまったほどの体たらく(笑) ともあれ、本音は「NZで楽しく暮らせますように!」、今はこれに尽きます。夫は「健康な毎日」「安定した生活」。書いた本人自ら「爺臭いね」との弁。飾り付けが終わり、雨が上がったベランダに出すと、思いがけない風が吹いていて、あっという間に短冊の半分が空に吸い込まれていきました。それにも構わず飾ろうとしているうちに、残りの短冊も一枚また一枚と、決して闇夜にならない明るい香港の夜の空へ飛んで行きました。

「お空に届いた願いはかなうんだよ」といい加減なことを言うと、そばにいた善は「ほんと?」と、目を輝かせていました。それから子供たちと「笹の葉さ〜らさら〜」とベランダで大合唱。香港で向かえた12回目にして最後の七夕がこうして終わりました。「夢は、かなう」 今年に入ってガン闘病を生き抜いた飼い猫ピッピに教えられ、自分達の移住申請が認可されて、しみじみ感じたこの想い。これからも小さいな努力と真摯な気持ちを忘れず、新たな夢に向かって一歩一歩進んで行きましょう。去年、日本でやった七夕に誰かがきれいな字で書いてくれた短冊の通り、「みんなのねがいがかないますように!」

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「マヨネーズ」 本当に申し開きができないくらい、ご無沙汰しております。「移住後もメルマガは続くんでしょうか?」というお問い合わせも何件か受けており、ろくなご挨拶もないまま、こんなに飛び飛びになってしまい、本当に申し訳ありません。ホームページに遊びに来ていただいている方は、「トラウマ日記」の方でこの間のUPをご覧になったかもしれませんが、そうでない方には「どうしちゃったの?」というところですよね、失礼しました。

NZ行き前の夢が夢であるうちの気持ちを、香港への愛惜を、あれをこれを・・と想いは募る一方なのですが、絶望的に時間がない状態が続いています。今しばらく不定期配信になるかもしれませんが、移住後もメルマガは"西蘭家の移住記録"として必ず続けますので、今後ともよろしくお願いします。

西蘭みこと

   
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