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Vol.0228 「生活編」 〜飛ぶ鳥フンだらけ〜

海外移住を経験する人はそう多くないでしょうが、そういう人の出発前夜とはどういうものなのでしょう? @家族でしんみりと新生活を語り合う、A友人たちと最後の最後までワイワイ楽しくやる、B独り静かにグラスでも傾けながら来し方、行く末を想う、C髪を振り乱しての荷作り、D名残惜しさから友人知人へ電話をしまくり別れを惜しむ、Eごく普通にテレビでも見ながら自宅で夕食、定時就寝・・・など、いろいろ考えられます。

私の場合、EとBの可能性は当初からなく、Dの余裕もなく、Aはかなり精力的にやってきたので出発前夜は友人一家との夕食に抑え、@を理想としながらも、徹夜のCを覚悟で、今さらメルマガを書いているところです(笑) だいたい出発の24時間前の夜9時の時点で、私以外の誰も家にいません。夫は所属しているクラブへ最後の最後に知人と飲みに行き、子供たちはそれぞれの親友宅にお泊り。今ごろは楽しくやっている頃でしょう。ネコさえ昼間に獣医の元へ預けてしまったので、もうここにはいません。

限りなく日常生活の延長線上にありながら、ちょっと時間が差し迫っているところがいつもと違いますが、夫曰く「移住というより、明日から旅行にでも行くみたいな気分」で、私もまったく同感です。ここが駐在を終えて日本に帰る駐在員家庭との大きな違いでしょう。所詮は香港の永住権を持つ身、何だかんだとこれからも付き合いが続くのがわかっているせいか、切迫感のようなものがありません。今できないことは、「次来た時にしよう」と、心のどこかで思ってしまっているようです。

出発に当たり、自分たちレベルでの「あれもしたい、これもしたい」は、夫婦揃ってかなり控え目です。しいて言えば、夫が@ギリギリまでジムを続ける(出発の前々日まで皆勤賞)、Aある和食レストランのカツ丼を食べる(出発前日のランチに達成)、B最後にクラブで過ごす(現在達成中)、C占いの先生に会いに行く(執筆時では未達成)を掲げ、75%の達成率。

私は@ビーズの買出し(出発の前々日に達成)、A大好きな下町の上環(ションワン)→湾仔(ワンチャイ)のハシゴ(執筆時では未達成)、B同じく大好きなスタンレーでNZへのお土産と冬服探し(出発前日に予定してましたが、ひょんなことからこの日に知り合いになったご一家に、「長いお付き合いになりそう」という予感を感じ、納得づくで断念)、C車仔麺を食べに行く(執筆時では未達成)、というのをユルユルの目標にしていましたが、今のところは25%の達成率。このまま行ってしまっても、「まっ、いっか。」

しかし、こと相手があることとなると話は違ってきます。「あの人に会いたい」、「この人にはせめて電話かメールを」となると、「次来た時にしよう」とか「まっ、いっか」では済まされず、気持ちは焦るばかり。携帯電話の短縮ダイヤルに登録している友人をチェックしていくと、移住決定を知らせていない人の多さに愕然としてしまいます。形式的な社交辞令は性格的にできませんが、お世話になった人に義理を欠くのは忍びなく焦るばかり。しかし、実際は外を飛び回っていたり人に会ったりで、なかなか思うに任せません。

前に友人から聞いた話ですが、彼女が日本でOLやっていた時に部署代えがあり、てんてこ舞いだったそうです。当然、移って行く方を優先して仕事を回していたら、元の部署の上司に、「普通は"飛ぶ鳥後を濁さず"って言うのに、これじゃあ"飛ぶ鳥フンだらけ!"」と文句を言われたそうです。本人は「あんまりよね〜〜」と憤慨してましたが、その場に居合わせたみんなは抱腹絶倒。以来、思い出すだけでもニヤニヤしてしまいます。

出発を明日に控えた西蘭家は、まさにフンだらけ状態。香港を離れるにあたり、現時点でどうしても電話をしておきたい人が最低でも5人はおり、子供関係でも各2人。メールを送りたい人はその倍以上に上ります。しかし、夜の出発までの最後の1日は、最低でも2週間は香港に居残ることになってしまったネコの見舞いが先決で、獣医にしかと今後のことを頼んでくるつもりです。それ以外にも荷造りの続き、私達あての手紙の回収、インターネットの取り外し、ウィークリーマンションのチェックアウトやデポジットの回収など、こまごましたことが目白押しです。

しかし、夕方5時半には友人がジープで迎えに来てくれるので、荷物を押し込み、自分達も飛び乗り一路空港へ向かわなくてはなりません。けっきょく、義理を尽くすどころではなく、「あれも、これも・・・」などというチマチマした想いは、ハサミでチョン切られたまま宙ぶらりんになってしまうはずです。この時期に手書きの「サンキューカード」をみなに贈って帰国した人を知っていますが、私には逆立ちしてもできないことでした。

・・・という訳で、偶然にもこのメルマガを目にした香港在住の知り合いの方々、いつものことですが、そんなこんなのままNZへ発ちます。それからすでにすっかりお世話になっている、ホームページを通じて知り合ったNZ在住の友人の方々(お会いしたこともない方を含め)、のしのかかった菓子折り持参どころか、本当に手ぶらで行きますが、なにとぞ末永くよろしくお願いします。さ〜〜て、夫も帰宅したことだし、プレゼントのキンキンに冷えたシャンペン「クリスタル」を飲みながら、エンドレス荷造り開始っ!

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「マヨネーズ」 「人の善意ってなんだろう?」と考えさせられる日々です。意外なご一家が信じがたいほど手厚く見送ってくれたり、「いったい何回送別会の幹事になってくれた?」という親しい友人もいれば、見ず知らずだった初対面の方と意気投合した後に、「お元気で」と、ランチをご馳走になったりしました。身に余る光栄で、ただただ感謝するばかりです。
(←主催していた勉強会のみんなからのプレゼント。出発直前まで咲き誇っていたひまわり)

西蘭みこと

   
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