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Vol.013 ■ アンクル・テリー その2

「これから南へ行くんだったら、そのう〜、人種差別っぽいことがあるかもしれないけど気にしない方がいいよ。ボクはクライストチャーチ出身だから周りにもそういう人がいたけど、彼らは単に"ストレンジャー"に慣れてないだけなんだ。だからと言って偏見が正当化するわけじゃないけど、そのう〜、まあ大目に見てやってくれよ。悪気はないんだ。」

言い難いことを言う時、人は早口になり、相手が口を挟んで来ないように語尾を長く、一気に話しがちになるものですが、その時のテリーはまさにそんな感じでした。私たちはカイコウラからクライストチャーチを抜け、ダニーデンに行こうとしているところだったのです。テリーはたった一泊しただけのモーテルのオーナーでしたが、その夜のバーベキューに私達も招いてくれ、深夜まで話して、話して、話しまくったせいか知り合って24時間以内ということが信じられないくらい心の垣根が取り払われていました。だからこそ彼は言い難いことを敢えて忠告してくれたのでしょう。「ありがとう、テリー。あなたの言わんとすることは良くわかるわ。でも言葉にしてくれてありがとう。」そう言いながら私達は名残惜しくカイコウラを後にしました。

Dear Terry あれから南をグルっと回ったけどあなたの忠告が杞憂で終わったことを一言言っておくわね。「Vacancy」と出ていたモーテルで「空いているお部屋を・・」と言うと、受付に出た女性がしげしげと私を見て、「今は空いてません。」と言ったことがあったの。一瞬「えっ?」と固まったものの、すぐに「この通りはモーテルがたくさんあるから必ず見つかるでしょう。」と言われ、身構えた自分を恥ずかしく思ったりしたっけ。本当に今しがた誰かが入ってしまったのかもしれないし、ひょっとしたら私達を泊めたくなかったのかもしれないけど、間髪入れないフォローの言葉に悪い気はしなかったし、実際すぐ先でいい宿を見つけたしね。テリー、あなたが心配するほど悪いところじゃないわよ、ニュージーランドって。私達もあなたが思うほど柔ではないのかも。何よりもあなたのように気遣ってくれる人がいるってこと自体、素晴らしい国だと思う。本当に移住しますから、それまで元気で。…Regards, Mikoto

西蘭みこと