Vol.014 ■ おいしい水 「信じられない。」私は手にした二本のペットボトルをかわるがわる見ていました。一本はお店で買ったミネラルウォーターで、もう一本はその日の朝、ロトルアのモーテルを出る前に水道水を入れてきたボトルでした。子供たちにミネラルを残しておこうと水道水の方を飲んだのですが、ちょうど飲み終えてしまい「もう少し・・・」と思ってミネラルの封を開け口にすると・・・。何だか水が匂うのです。決して不快なほどではないにせよ、口にした瞬間、何とも形容しがたいのですが、新鮮でないような、もう死んでしまった水のような、そんな匂いがしました。 香港の水道水は飲めません。政府は飲めると言っていますが誰も飲みません。ですから沸騰させて湯冷ましを使うか、飲み水を買ってくる以外水を飲むことはできないのです。水を飲むためには人工的に工場で作った蒸留水を買うのが最も一般的ですが、これは化学記号こそH2Oであっても工業製品のような、まったく生の息遣いが感じられない代物で、私はどうしてもお金を払ってまで求める気になれません。フランスに住んでいた時にミネラルウォーターに開眼してしまったこともあり、西蘭家の飲み水は毎月何箱かのミネラルウォーターに支えられています。 そのため、かなりのお金を払って買うミネラルウォーターよりも水道水(こちらも有料ですが比較にならない金額でしょう)の方がおいしいとは本当に驚きでした。こんなにおいしいお水でシャワーを浴び、洗濯をし、草木に惜しげもなく撒いているロトルアの人たちが心底羨ましくなりました。 以来、ニュージーランドではボトルの水を買うのは最初の一回だけです。あとはそのボトルを持ち歩き、朝はモーテルを出る前に水を入れ、足りなくなれば途中で立ち寄ったレストランやテイクアウェイで足してもらって過ごしています。そんな時に「この町の水はNZで一番おいしいと言われているのよ」「他にボトルはないの?もっと入れてあげるわよ」と、かけてもらう一声が地酒ならぬ"地水"を一層おいしくしてくれるのでした。 西蘭みこと
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