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Vol.019 ■ ヒーロー・アゲイン

ポンソンビーのモーテルにチェックインすると、オーナーのジェリーがモーテルの説明から愛犬ラッキー、その界隈のだいたいの概略までを淀みなく語ってくれました。宿泊客ごとに1日数回としても、もう何百回、へたをすれば何千回と繰り返してきた説明なのでしょうが、マニュアル化されたところが全く感じられない、モーテルや街への愛着がにじむような語り口でした。

「ポンソンビーはゲイのパレードでも有名な場所で・・・」というくだりで、「え?ゲイって言った?」と思いながらも、話題が次に移っていくに任せて聞き流していました。部屋に入ると、彼がせっせと作ったらしい、こまごまとした説明がびっしり書いてあるダイレクトリーを見つけ、パラパラとめくっていくと確かにゲイ・パレードのことが書いてあります。

彼は敷地内の洋館にガールフレンドのサリーと住んでいて、どう見てもゲイではありませんが、数日しかいない旅行者に敢えて詳しく説明するくらいだから、よほど有名なイベントで、ストレートの人達にとっても楽しみなものなのでしょう。初対面同士が、「あのレストランは美味しい」と話す延長で、ゲイの人たちの話になるなんて、その自然さが何とも新鮮で、ニュージーランドの開かれた社会の一面を垣間みるようでした。

実際、先日発足した第2次クラーク内閣に入閣したクリス・カーター新環境保全相はゲイであることをカミングアウトした最初の国会議員だし、労働党には世界初の性転換議員であるマオリのジョージナ・バイヤー議員もいるくらいですから、いまさら"開かれた社会"などと強調する必要もないくらい、全方位に窓もドアも開いているのでしょう。こうした一歩も二歩も先を行っている現実を知るたびに、ますますニュージーランドが好きになります。

しかし、「ヒーロー・パレード」の愛称で親しまれ、レズビアンやバイセクシュアルの人も参加するゲイ・パレード、今年は予算の関係で中止が決定したそうです。寄付も参加もしないまったくの外野の身ではありますが残念です。どうか来年の夏こそは、ヒーロー・アゲイン!

西蘭みこと