Vol.024 ■ 地球上から最初に消える国 南太平洋に浮かぶ人口1万千人の小国ツバルは、今のまま地球温暖化が進み、それによって氷河が溶け出すなどして海面上昇が続けば、今後50年以内に水没してしまう可能性がある最初の国です。「朝日新聞」や「日経新聞」でも取り上げられたので、ご存知の方も多いかもしれません。 私が暮らす香港は返還後5年たち、「一国二制度」のもとでの自主独立が保証されているのはあと45年。しかし、完全に中国のもとに復帰したからと言ってこの土地が消滅するわけではありませんし、市民の暮らしが激変するとも思えません。しかし、それとほぼ同じ期間内にツバルは影もかたちもなくなる可能性があるのです。 待ったなしの状態の中、ツバル政府は国の存亡をかけ必死の対応に出ています。まず温暖化対策に消極的なアメリカやオーストラリアなどを相手に、モルディブなど同じ問題を抱える海洋諸国とともに1年以内に訴訟を起こす準備に着手しました。既に米豪の弁護士事務所を雇い入れ、対応を練っているそうです。 こうした活動の資金源となっているのが、な〜んとインターネットの国名ドメイン名。たまたまツバルは".tv"となり、"テレビ"に相当したのに目をつけて、この管理権をリースすることで日本円にして年間2億8千万円相当のリース料を受け取っていく予定です。政府は追い詰められながらも、あの手この手の懸命な努力を続けているのです。 有史以来、人類が初めて経験するのであろう、こうしたかたちでの亡国に対し、人はどれだけ想像力をたくましくして、その痛みを分かち合うことができるでしょう。オーストラリアは当然のことながら、自国の政策が地球温暖化をもたらしていることも、それが海面上昇につながっていることも、ツバル国民の移住受け入れも、すべて否定しています。ニュージーランドは年間80人のツバル人受け入れを既に決定しています。 西蘭みこと
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