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Vol.030 ■ 1日の始まる国

一年はニュージーランドから始まります。島嶼国を除いた主要国の中では、NZが地球上で最も東に位置しているので、ミレニアムの時に有名になったギスボーンから新しい一日が、ひいては一年が始まっているのです。世界中のほとんどが深い眠りについているか、前日を楽しんでいる頃、NZの東の海岸線からは新しい一日を告げる太陽が、静かに上がって来ているのです。いつか、そのご来光をこの目で見てみたいものです。

金融界ではアメリカの同時多発テロのような世界的な大事件が起きた時のみ、世界中がニュージーランドに注目することになります。「NZドル動向は?株式市場の寄り付きは?金利は?債券は?」と、普段ほとんど縁のない人たちまで、一生懸命に情報端末機で検索し、市場動向を確認することになります。これは単に世界で最初に開く市場なので、大事件に対して投資家がどういう反応に出るかを確認するためです。「売りか?買いか?」、NZ市場の動きから少しでもその日の主要市場の動きを読み取ろうとしているのです。

しかし、そうした大きな事件でもない限りは、あまり注目度の高い市場とは言えず、単調な商いが続く日がほとんどです。世界のどこからも遠い国は、地理的にだけでなく、精神的にも経済的にも、世界のほとんどの人にとって縁遠いところなのです。景気の良い時も悪い時も、NZは地球儀のはじっこの方でひっそりとやってきましたし、今でもそうかもしれません。しかし、新世紀を迎え、世界が急速に変わっていく中で、軍事レベルでの安全保障から食べ物まで、ありとあらゆるものへの「安全」というものが注目される中、その"はじっこ"という位置づけが、俄然陽の目を見るようになってきた気がします。

移住者、観光客の急増、彼らにくっついてくる資金の流入、それに押し上げられるかたちのNZ高。それらが合わさった資金流動性の高まりから来る景況感→インフレ→高金利。金利が高くなると、また海外からのNZドル預金が増えて、一段のNZドル高につながって・・・と、典型的なスパイラル現象に入っているようです。これを単に景気サイクルの一部分で終わらせるのか、他に類を見ない新たな21世紀型国家として、前人未到の国家となっていくのか、年初に当たりその動向から目が離せません。願わくは後者であるように。

西蘭みこと