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Vol.036 ■ メドウバンク・スクール

車を降りると、目の前のグランドで子供たちが妙なスポーツに興じていました。バッターボックスで打つボールを、グローブをはめたり素手だったりする20人以上の子供がとるのです。野球のようですがピッチャーは見当たらず、その代わりにバッターの前には子供のおなかくらいの高さの杭があり、その上にソフトボールが載っています。バッターは静止したそのボールを横打ちし一塁方向に走るのですが、何せ内外野手がひしめいているので、結果はフライかボテボテのゴロにみんなが一斉に跳びかかるかという状態で、すぐにボールは審判兼キャッチャーの先生のところに戻され、再び杭の上に載せられます。

「何してるの?これ野球?」と不思議そうな9歳と5歳の息子。彼らは香港生まれの香港育ちですから、目の前でグローブをはめている子以上に野球を知っているとは思えません。「何だろうね?野球かな?ママもわかんないな〜」と、正直に言うと、「でも面白そうだね」と言いながら、二人は長男と同じくらいに見える子供たちを食い入るように見ています。

私たちが訪ねたオークランドのメドウバンク・スクールは、長男の元担任だったキウイの先生が香港から戻って働き始めた学校です。私たちは今では仲の良い友人となっていたので、彼女の職場を訪ねながらニュージーランドの小学校の見学に来たところでした。今回の旅行中、既に彼女に2回も会っていたというのに、いざ職場である学校を訪ねるとなると今までのような気楽さがなくなり、子供も「もしかしたらNZの学校に通うのかも」と緊張しているのか、心持ち不安そうな面持ちでした。

しかし、その軽い緊張をあっという間に解きほぐしてくれた妙な野球。「ここは本当にスポーツ王国なんだろうか?」と思ってしまうくらいのんびりしたもので、みんなでワイワイガヤガヤ楽しそうです。狭い香港では望みようもない広々としたグランド。子供たちは3分の1が裸足、3分の1がサンダル、3分の1が運動靴。太った中年女性の先生もヒラヒラのワンピースに麦わら帽子とサングラスという、およそ体育の授業中には見えない姿。スッと入って行けそうな気軽さに親子ともどもちょっとホッとして校門をくぐりました。

西蘭みこと