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Vol.041 ■ ご近所モード

ニュージーランド旅行の楽しみの一つはモーテルを泊まり歩くことです。ホテルのように何もかもをお金で解決する傲慢なものではなく、B&Bのようにお金を払っていても居候として肩身が狭いものでもなく、キャンピングカーで回るほど自給自足度が高くない私たちにはちょうどいい宿泊施設です。値段も家族で泊まって全国一律100NZj(6,500〜7,000円)ちょっとでそこそこのところが見つかるため、海外から来た身には非常に手頃です。

どこもキチネットが付いているので料理ができます。電子レンジ、トースター、湯沸かし器以外に本格的なオーブンがあるところもあります。収納場所が少ないことを除けば一般家庭とそうは変わらない設備です。私たちは地方を回る時は1日おきくらいに自炊します。どうせ夕方になると何もかも閉まってしまうので、開いているのはスーパーくらい。1日の観光を終えた帰りに食材を買い込み、そのまま夕食の準備に入ります。

料理していると開いた窓から隣の部屋の夕餉の香りがしてきたり、時間がかかるものを作る時は途中で洗濯に行ったりと、グッと日常っぽさが濃厚になり、家でなくても"家事"状態。外で遊んでいる子供を呼び戻して食べ始める頃には、お風呂にお湯を張り始め・・・と、旅と日常、ハレとケの境目がどんどん判然としなくなってきます。しかし、ニュージーランドに限っては「せっかく休暇を取り、お金をかけてここまで来たのに」という気が起きず、いそいそとキッチンに立ってしまうから不思議です。

これは快適さをお金で買うことが似あわず、自分の労力を惜しまないことが気分的にピタリとくる土地柄のせいかもしれません。旅行者といえども知らず知らずのうちに、ご近所モードにはまってしまうようです。地元の人に混じって買い物をするスーパーでは、大振りながら新鮮そうな野菜が鈴鳴り。「サラダを作ろう!」、「アスパラをハムと炒めよう!」と、カンタンでも美味しそうな料理がポンポン思い浮かぶこともついつい手作りモードが加速してしまう一因です。前回の旅行でも余ってしまった大きなブロッコリーをチェックアウトの際にモーテルの人に残してきました。"Thank you for your broccoli."と、ニッコリされ、いいなぁ、このご近所っぽさ。

西蘭みこと